つやだしのレモン

読んだもの、見たものの感想を書く場所。

今月読んだ本 2020年10月

・結城充考『躯体上の翼』 ・桐野夏生『夜の谷を行く』 ・帚木蓬生『閉鎖病棟』 ・大森望(編)『ベストSF2020』 ・ロス・マクドナルド『さむけ』 ・リチャード・ニーリィ『殺人症候群』 ・東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』 ・オリヴァー・サックス『…

『妻を帽子とまちがえた男』 「普通」と「普通ではない」の雑な切り分け方

妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ文庫NF) 作者:オリヴァー サックス 発売日: 2015/09/30 メディア: Kindle版 間違いなく興味深い本。同じ著者の『火星の人類学者』も名著。 ただ、注意が必要だと思うのは、著者の考え方。オリヴァー・サックスは「普通」の…

福田ますみ『でっちあげ』『モンスターマザー』

でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―(新潮文庫) 作者:福田 ますみ 発売日: 2016/11/04 メディア: Kindle版 モンスターマザー―長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い―(新潮文庫) 作者:福田ますみ 発売日: 2019/07/19 メディア: Kindle版 と…

今月読んだ本 2020年8月

・望月優大『ふたつの日本』 ・野坂昭如『火垂るの墓』 ・岡田索雲『鬼死ね』1-4 ・岡田索雲『メイコの遊び場』1 ・うめざわしゅん『一匹と九十九匹と』2 ・草水敏・恵三朗『フラジャイル』1-3 ・望月優大『ふたつの日本』 ふたつの日本 「移民国家」の建前…

今月読んだもの 2020年2月

・セバスチアン・ジャプリゾ『シンデレラの罠』 シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1) 作者:セバスチアン・ジャプリゾ 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 1964/11/27 メディア: 文庫 趣向を凝らしたサスペンス。主人公が探偵であり、犯人であり、被害者で…

遠藤周作『死について考える』 痛みへの共感が、痛みを和らげる

死について考える (光文社文庫) 作者: 遠藤周作 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 1996/11/01 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (6件) を見る 遠藤周作の晩年の随筆。キリスト教徒の死生観を知りたくて読んだ。 遠藤周作は病気…

少年A『絶歌』 少年Aは更生したのか?

元少年A『絶歌』を、「少年Aは更生したのか?」が知りたくて読んだ。 ・加害者が本を出すこと 殺人のような重大事件の加害者が本を出すことには社会的な価値がある。「過去に重大な犯罪を犯した人間がどのように更生したか」(あるいはしていないか)を知る…

マーティン『洋梨形の男』 不ぞろいな短編集

洋梨形の男 (奇想コレクション) 作者: ジョージ・R・R・マーティン,中村 融 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2009/09/15 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 29回 この商品を含むブログ (52件) を見る 「奇想コレクション」と銘打たれたシリーズ…

徳永進『在宅ホスピスノート』 在宅での死

在宅ホスピスノート 作者: 徳永進 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2015/06/26 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 以下、引用のページ数はすべてKindle版。 ・「在宅での死」と「病院での死」 本書のテーマは、「在宅での死」について見直して…

マーティン『ナイトフライヤー』 マーティンは多彩だ

ナイトフライヤー (ハヤカワ文庫SF) 作者: ジョージ R R マーティン 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/05/15 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作「氷と炎の歌」シリーズの作者であるマーティン…

『アンネの日記』をいまさら読んでみる

増補新訂版 アンネの日記 (文春文庫) 作者: アンネフランク,深町眞理子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2003/04/10 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック: 65回 この商品を含むブログ (79件) を見る 『アンネの日記』。中学生・高校生のときに学校の推薦図…

『ダイナー』 三池崇史映画の小説版

ダイナー (ポプラ文庫) 作者: 平山夢明 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2012/10/05 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 4回 この商品を含むブログ (23件) を見る 平山夢明『ダイナー』(DINER)の感想。7月5日に映画が公開されるらしい。 平山夢明は『…

『何が私をこうさせたか』 不可解な人生を歩かされることへの困惑

何が私をこうさせたか――獄中手記 (岩波文庫) 作者: 金子文子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/12/16 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る ・『不当逮捕』の記述 本田靖春『不当逮捕』の中に、朴烈事件の金子文子についての記述がある…

市橋達也『逮捕されるまで』 強烈な自己愛

逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録 作者: 市橋達也 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2011/01/26 メディア: 単行本 購入: 15人 クリック: 1,224回 この商品を含むブログ (35件) を見る 市橋達也の手記。市橋はリンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件の犯人…

ディック『小さな黒い箱』 「ラウタヴァーラ事件」「運のないゲーム」が名作

小さな黒い箱 ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫SF) 作者: フィリップ K ディック 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/11/30 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 「ラウタヴァーラ事件」が結構好き。文化の違いをグロテスクに書いている。 …

島尾敏雄『死の棘』 読書体験そのものが泥沼

死の棘 (新潮文庫) 作者: 島尾敏雄 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1981/01/27 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 82回 この商品を含むブログ (128件) を見る ・泥沼のごとき小説 作者の実体験をもとにした私小説。トシオの不倫がきっかけで妻のミホは精…

アイリッシュ『夜は千の目を持つ』 行き当たりばったりの適当サスペンス

夜は千の目を持つ【新版】 (創元推理文庫) 作者: ウィリアム・アイリッシュ,村上博基 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2018/11/21 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 推測される当初の構想 『幻の女』で有名なウィリアム・アイリッシュが、「…

ティプトリー『故郷から10000光年』 この読みにくさもティプトリーの魅力か

故郷から10000光年 (ハヤカワ文庫SF) 作者: ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア,伊藤典夫 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1991/04 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 105回 この商品を含むブログ (50件) を見る ティプトリーの第一短編集。全体的に読…

アイリッシュ『幻の女』 幻の都市の雰囲気

ウィリアム・アイリッシュ『幻の女』の感想。ネタバレあり。 幻の女〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: ウイリアムアイリッシュ,William Irish,黒原敏行 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2015/12/18 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (8件) …

『カリブ諸島の手がかり』 ジャンルを超越する快感

カリブ諸島の手がかり (河出文庫) 作者: T S ストリブリング,倉阪鬼一郎 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2008/08/04 メディア: 文庫 クリック: 12回 この商品を含むブログ (24件) を見る ・推理小説というよりは、雰囲気を楽しむ小説 カリブ諸島の雰…

本田靖春『疵』 極私的な戦後史

疵―花形敬とその時代 (ちくま文庫) 作者: 本田靖春 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2009/08/10 メディア: 文庫 クリック: 3回 この商品を含むブログ (4件) を見る 極私的な戦後史 解説に、この本は著者の本田靖春による「極私的な戦後史」である、という…

湯浅誠『反貧困』 すべての人に居場所のある社会

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書) 作者: 湯浅誠 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2008/04/22 メディア: 新書 購入: 45人 クリック: 434回 この商品を含むブログ (216件) を見る 「貧困=自己責任」は正しいのか 筆者はまず、「貧困は自己責…

『誰も語らなかったジブリを語ろう』 芯のある物語はそんなに必要とされているのか?

誰も語らなかったジブリを語ろう (TOKYO NEWS BOOKS) 作者: 押井守 出版社/メーカー: 東京ニュース通信社 発売日: 2017/10/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 批判することがタブー視されているジブリを、真正面から語ってみようという…

アイリッシュ『ニューヨーク・ブルース』

ニューヨーク・ブルース―アイリッシュ短編集 (6) (創元推理文庫 (120-8))作者: ウィリアム・アイリッシュ,村上博基出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1977/04/22メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る 名作ぞろいの短編集 名作が…

アーシュラ・K・ル=グウィン『ファンタジーと言葉』(岩波現代文庫、2015年)

ファンタジーと言葉 (岩波現代文庫)作者: アーシュラ・K.ル=グウィン,青木由紀子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2015/03/18メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る○メモ ル=グウィンの新刊ということで発売時に即購入、そのまま本棚に眠らせて…

深水黎一郎『最後のトリック』(河出文庫、2014年)

最後のトリック (河出文庫)作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2014/10/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (13件) を見る●作品メモ 「読者が犯人」という、推理小説の究極をつきつめた作品……というか、「つきつめた!」と謳っている…

逆柱いみり『空の巻き貝』(青林工藝舎、2009年)

空の巻き貝作者: 逆柱いみり出版社/メーカー: 青林工藝舎発売日: 2009/07/31メディア: コミック購入: 2人 クリック: 11回この商品を含むブログ (9件) を見る●作品メモ Wikipediaによれば、つげ義春の「ねじ式」に影響されて漫画家になったらしい。この情報が…

ジョージ・オーウェル・川端康雄訳『動物農場 おとぎばなし』

動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)作者: ジョージオーウェル,George Orwell,川端康雄出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/07/16メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 56回この商品を含むブログ (42件) を見る●メモ 解説にはソヴィエト批判のために書かれた…

【読書メモ】 『辰巳ヨシヒロ傑作選』

辰巳ヨシヒロ傑作選 (ビームコミックス)作者: 辰巳ヨシヒロ出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン発売日: 2014/10/25メディア: コミックこの商品を含むブログ (3件) を見る●作品メモ 本のカバーと帯がカッコイイ。カバーは「わかれみち」という短編か…

新井英樹『SCATTER 6』

SCATTER あなたがここにいてほしい 6巻 (ビームコミックス)作者: 新井英樹出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン発売日: 2015/01/24メディア: コミックこの商品を含むブログ (5件) を見る●メモ 1年に1冊ずつ出る『SCATTER』の第6巻。 第5巻を読んだの…