今月読んだ本 2020年7月
・加藤智大『解』
・紀田順一郎『東京の下層社会』
・森博嗣『すべてがFになる』
読んだあと、冷静に考えると「動機は?」とか「なんでそんな面倒なことを?」みたいな疑問が湧いてくる。でも読んでるときはあんまり気にならない。雰囲気作りがうまいからか。
「理系」の小説、と評価されてるけど、キャラの造形や物語の展開は特に理系っぽくはない。小説の醍醐味は論理や秩序をすっ飛ばして勢いや感覚の力を味わうことだと思うが、この小説はまさにそういう勢いや感覚の要素が強くて、小説らしい小説だと思う。冷静に考えると「?」な要素はいっぱいある小説だけど、読書中はその「?」を感じさせないようなパワーがある。
・中島らも『今夜、すべてのバーで』
アルコール依存症になった人が主人公。中島らもの実体験に基づく。依存のありさまを淡々と描いていて興味深い。
小説としての完成度はいまひとつに思った。主人公の親友とその妹、医者などの登場人物がハイテンションでまくしたてたり啖呵を切ったりするのは、演劇ならいいかもだけど小説だとリアリティを損ねる。特に、アルコール依存症を扱うシリアスな小説だと。
・荒木飛呂彦『荒木飛呂彦の漫画術』
ジョジョの作者が説く、王道の少年漫画の書き方。
若手時代に原稿を編集者にボツにされまくり、「いかに読んでもらうか」を研究したという話が面白い。読者に興味を持ってもらうために、1ページ目の作り込みをしたという。他の漫画や、映画の技法も研究したとか。
・山本章一『堕天作戦』1-5
ジョージ・R・R・マーティン「氷と炎の歌」シリーズみたいな陰鬱な雰囲気の物語だけど、その暗さを和らげるような気が抜けるようなユーモアが散りばめられていて面白い。緊迫したシーンなのに、間抜けなキャラやセリフで笑っちゃう。
魔術のある世界でのバトルものだけど、かっこいいヒーローは出てこなくて、みんなどこか間抜けである。めっちゃ強い能力持ってるのに見た目がモブっぽかったり、言動がダサかったり。「完全無欠の英雄は絶対に出さない」という作者の強い意思を感じる。