つやだしのレモン

読んだもの、見たものの感想を書く場所。

今月読んだ本 2020年8月

 

・望月優大『ふたつの日本』  

  データをもとに日本の「移民」の現状を説明する本。

 日本に住む外国人の現状については、具体的なエピソードをベースに語る本は読んだことがあるけど、この本みたいに実際の数を出して歴史的な流れや政策の意図を説明してくれる本は貴重。

 特に「特定技能」の立ち位置についての説明は興味深かった。

 

野坂昭如火垂るの墓』 

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

 

  まだ『エロ事師たち』とこれしか読んでないけど、野坂昭如はほんとうに凄い。唯一無二の作家。

 これは短編集で、どれも同じような時代設定と同じような人物が出てくる。戦争によって変わってしまった日常に翻弄される人たちの話。というと単なる戦争苦労体験になってしまうが、細部の丁寧な描写、充満するユーモアを独特な文体でくるんでお届けされるので、どれも胃もたれするくらいに強烈である。「海宝麺」「撞球場」「青桐」「大久保彦左衛門」みたいな知らない単語がたくさん出てくるのも時代設定のリアリティを高める。

 

・岡田索雲『鬼死ね』1-4 

鬼死ね(1) (ビッグコミックス)

鬼死ね(1) (ビッグコミックス)

 

  これは素晴らしい。漫画に限らずフィクションをたくさん読んでいると、面白いはずのものに対して素直に「面白い!」と感動しにくくなってくるけど、この漫画は「面白い!」という感動にずっとひたりながら読めた。得体のしれないものを読んでいるときのワクワクする気持ちがある。

 『ゴールデンゴールド』と同じで、「こういう漫画」と説明するのが難しいタイプの内容。ただ基本的にはギャグ漫画だと思う。後半はなぜか『HUNTER × HUNTER』みたいになる。そういえば主人公の2人はゴンとキルアの関係性にそっくり。

 未完で終わってるけど、4巻まででも十分に楽しめる。

 

・岡田索雲『メイコの遊び場』1 

メイコの遊び場 : 1 (アクションコミックス)
 

  『鬼死ね』の流れでこっちも読む。著者の最新作。

 日本の伝統的な遊びをする子どもたちのパートと、メイコの怪奇を見せるパートの2つで構成されている漫画。

 1970年代の設定らしく、「昭和の日本」を描いているはずなんだけど、でもそんなに昭和な感じがしない。子どもたちの遊びと夜のメイコのお仕事が話の中心で、生活の場面があまり描かれていないからか。

 

・うめざわしゅん『一匹と九十九匹と』2 

一匹と九十九匹と2

一匹と九十九匹と2

 

  Amazon Prime Readingで読む。きれいに全うに正しく生きている人間に対して、悪意をぶつけて反応を見たくなる気持ち、分からなくはない。

 

草水敏・恵三朗『フラジャイル』1-3 

 Kindleで無料だったので3巻まで読む。医者のきれいなところと汚いところをしっかり描いていて面白い。大げさに描いている部分もあるのかもだけど、「医者の診断ミス」や「製薬会社のあくどい治験」にはへーと思う。神聖な場所というイメージのある病院の衣を剥ぎとって、人間らしい方向にぐっと近づけるような内容の漫画。