つやだしのレモン

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『Bioshock: Inifnite』レビュー

8  /  10

 

GOOD

景色が美しい

 舞台は空中都市コロンビア。空に浮かぶ都市。

 「色」が他のゲームと全然違う。ルネサンス期の絵画のような鮮やかな色と、少しモヤのかかったような遠景。FPSゲームは暗い色合いのゲームが多いので、こういうパッと明るい景色が楽しめるFPSは貴重。

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エリザベスの挙動が楽しい

 ほぼずっと「エリザベス」という名のキャラと一緒に行動する。そのエリザベスの挙動が凝っていて楽しい。壁に背中を預けたり、手を後ろに組んでポスターを見上げたり、机の下を覗き込んだり。表情も豊か。

 このゲームはアイテムがそこら中に配置されているので、アイテム探索の時間がけっこう長いのだが、その時間を単調にせずに視覚的に楽しめる工夫になっている。

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BAD

FPSとしては欠点が多い

 フックやスカイラインといったギミックは新鮮で面白く、他のFPSにはない強み。でも戦闘システムは出来の悪い部分も目立つ。

 まずは「敵の位置が分かりづらい」こと。敵が背景と同化していて視認しにくいことに加え、敵の声や銃の音のバランスがおかしいせいで、音を聞いての索敵がしにくい。本当はかなり遠くにいる敵の声がすごく近くから聞こえたり、声がする方向とは違う場所に敵がいたりする。だから、ふつうのFPSのように音で敵の位置を判断しようとしてもできない。

 敵の位置を知るためには、敵の前に身を晒して銃撃を浴び、その弾道からおおよその位置を判断するしかない。これがかなりしんどい。

 もう1点の不満は「敵の強さのバランスがおかしい」。『Bioshock』シリーズは戦闘が全体的に緩めで、最高難易度でもそれほど難しくない。本作もそれは変わっておらず、全体的に戦闘は易しい。ただ、終盤で出てくる「Lady Comsock」の亡霊は凶悪で、無限に敵を召喚しつつ本体も固い。この亡霊との3連戦は他の戦闘に比べてはるかに難しく、バランスの悪さを感じる。特に2戦目は、マップの制約で弾薬を補給できないようになっていて、状況によっては詰む人もいるはず(スナイパーを持っていれば遠くからの狙撃で倒せる。つまらない倒し方だが)。この過酷な亡霊3連戦を経たあとにラストバトルの船上での大乱戦をやっても、そんなに難しく感じないので盛り上がりに欠けてしまう。

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プロットが凝りすぎ

 『Bioshock』はストーリー面の評価が高く、本作も同じくプロットはかなり凝っている。ただ、『Bioshock』に比べると凝りすぎで、直感的に理解できるたぐいのものではない。

 『Bioshock』はゲームのシステムそのものを物語に取り込むというのが強いフックになっていると同時に、各キャラの個性を強く感じられる内容になっていた。しかし本作ではプロットを複雑にしすぎたために人物描写が歪んでいて、キャラクターがプロット上でただ動くだけの駒になっている。それを特に感じるのはエリザベスで、終盤にエリザベスが突然覚醒したかのようにすべてを悟り主人公を導くのだが、それが前半のエリザベスのキャラクターと噛み合っていない。プロットを見せるためにキャラクターが犠牲になっている。

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