つやだしのレモン

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老人Z

 北久保弘之 監督 『老人Z (1991年)

○印象と感想

 第一に、背景画が美しい。寝たきり老人が住むボロアパートの部屋、主人公がインターンで働く病院、今よりは活気のありそうな商店街など、見ているだけで心地よい背景。

 第二に、ストーリーが現代的。この映画が公開されたのは1991年だが、その20年後の今、少子高齢化ははるかに深刻化している。したがって、公開当時に比べると、現代の方が「今そこにある危機」への問題意識は高い。個人的には、ロボット医療って可能性に溢れていると思う。人力による介護は、優しさだけでなくて憎しみの土壌でもある。

 第三に、キャラクターが古臭い。一昔前のトレンディードラマを見ているような気分。「高齢化社会とロボット」というテーマはたいへん興味深いのに、映画自体がイマイチ面白くないのは、登場するキャラがみな平板で、魅力に乏しいから。看護師志望の主人公がナース服姿で駆け回ったり、病院にいる爺ちゃん連中が超一流のハッカーだったり、ロボット医療の責任者の役人がことあるごとに「厚生省をなめるなよー!」と叫んだり、見ているこっちが恥ずかしくなるようなキャラばかり。なにより、主人公のミニスカ姿をあれだけクローズアップする必要はなかった。キャラクターにもっとリアリティがあれば、高齢化社会をいち早くテーマにしたアニメとして、人々の記憶に残ったかもしれないだけに惜しい。