つやだしのレモン

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『The Forgotten City』レビュー


8  /  10

GOOD

・謎めいたストーリー
・キャラクター・景観・小物すべてが美しい
・シンプルで機能的なUI

BAD

・序盤がしんどい
・マップがほしい

 

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川のほとりで出会った女性から、ある依頼を受ける

 ミステリー仕立てのアドベンチャーゲーム。もともとSkyrimの大型MODだったが、スタンドアロンのゲームとして作り直されたものとのこと。同じく大型MODの『Enderal』が素晴らしかったので、このゲームにも興味が出てプレイしてみた。マルチエンディング形式で、すべてのエンディングを見るまでのプレイ時間は約10時間。

 ミステリー作品であり、タイトル画面でも「ネタバレ厳禁」を謳っているゲームなので、物語の内容に踏み込んでいくようなことは書けない。とはいえ、Steamのゲーム紹介に書かれている内容のレベルであらすじをまとめるなら、「ひょんなことから古代ローマ帝国の小都市にタイムワープした主人公が、その都市の謎を解く」というもの。

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景観が美しい

 グラフィックにはかなり力が入っていて、キャラクターの造形や自然・建物の景観、ちょっとした小物に至るまで素晴らしい出来栄え。アドベンチャーゲームでここまでの高品質なグラフィックは必要なのか?と思ってしまうレベル。

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建物の中のグラフィックも素晴らしい

 序盤は結構しんどい。しんどいのは難易度が高いというわけではなく、ストーリーに没入していくまでにかなり時間を要するということ。ゲームを開始して2時間ほどは「この都市に住むキャラクターを知る」ことに時間を使う必要があり、未知のキャラクターと出会うたび、そのプロフィールを埋めていくための会話をする必要がある。「あなたはどういう経緯でこの都市に来たのか」「この都市の戒律についてどう思うか」「この都市から脱出する方法を知っているか」といった質問を、すべてのキャラクターにしていくわけで、この時間はなかなか退屈。ゲームとしては「この世界に慣れる」ための準備時間なわけだが、出会うキャラクターの数がかなり多いので、新情報の洪水に辟易する人は少なからずいると思う。

 こういう「新しい世界をイチから知る」作業はえてして退屈で、特にアドベンチャーゲームではつきものではあるのだが、例えば『Detroit: Become Human』が、冒頭に緊張感のある場面を用意してプレイヤーが退屈しないように工夫するなど、すんなりとゲームに入っていける導入を設けているのに比べると、『The Forgotten City』はプレイヤーを選ぶ作りではある。

 ただ、そういう「序盤のしんどさ」をくぐり抜けて、謎を解いていく過程に入れると楽しい。ポイント&クリック形式のアドベンチャーゲームにありがちな、手持ちのアイテムを組み合わせたり、かたっぱしからアイテムを使用して正解を探すみたいな面倒な作業は一切ない。キャラとの「会話」で物語を進めていくストロングスタイルのゲームなので、作品世界に浸れればひたすらに楽しい。

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「会話」がこのゲームの核

 

 以下、ややネタバレ。

 

 

 

 ゲームの冒頭で「Karen」という名の女性が出てくるが、彼女のセリフから「Karen」という名前がいまアメリカでmeme化していることを知った。特権意識をもつ白人女性を「Karen」という名前で総称しているようで、もともとKarenという名前を持つ女性たちは肩身が狭い思いをしているらしい。なんでそういうネットスラングをゲーム内に持ち込むんだろうと思ったけど、「Karen」という名前じたいに仕掛けがあることをあとで知って、なるほどーと思った。

 結末はマルチエンディング形式。エンディングは4つあり、クリア時にどのエンディングだったかが表示される。4番目のエンディングがいわゆるグッドエンディングで、クエストの導線に沿って進めれば特に苦労なく解放できる。4つあるうち、1・2・4番目は自力で解放できたが、3番目は条件がやや難しく、攻略サイトを見てルートを知った。

 個人的な感想としては、4番目の大団円のエンディングよりも、1〜3のやや苦味のある結末のほうが印象に残る。4番目のエンディングは、みんなハッピーな雰囲気がやや嘘くさく見えたので、「そんなわけないよね」みたいなぶっ壊しが最後にあったほうがこのゲームの根底にある不吉さにマッチしていたように思う。

 あと、細かい不満点として、cistern(貯水槽)の入り口がどこにあるかが分かりにくい! 探しまくったが見つからなかったので攻略サイトを見てしまった。貯水槽がどこにあるかはおそらく誰かのセリフの中で言及されていたんだろうが、読み飛ばしていたのか分からなかった。クエストの説明画面に「cisternは〇〇にある」と書いてあると良かったかも。

 迷っている人のために書いておくと、upper cisternの入り口は「PalaceからGreat Templeへ続く道の途中」にあり、lower cisternは「Malleolusの家の入り口の左側」にある。