つやだしのレモン

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『Solasta: Crown of the Magister』レビュー

9  /  10

GOOD

・戦略性のある戦闘
・パーティ内の掛け合いが楽しい
・美しいグラフィック
・機能的なUI

BAD

・キャラの掘り下げが足りない
・敵の強さのバランスがイマイチ
・キャラの顔が変

 

 『Pillars of Eternity』や『Pathfinder: Kingmaker』と同じTRPGベースのゲーム。クリアまでのプレイ時間は50時間ほど。個人の好みでいうと、上記の2作よりも『Solasta』のほうが好き。RPGというジャンルは「冒険している」感を楽しむゲームだと思っていて、その点でいうと『Solasta』は冒険している感が濃厚に味わえて面白い。

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ターン制の戦闘

 このゲームの一番の魅力は戦闘。Steamのレビューを読むと「TRPGを忠実に再現した戦闘システム」とのことだが、TRPGに詳しくない私はよく分からない。攻撃するたびにダイスが振られるのがそうなのかなーぐらいの知識。ただ、単なる剣と魔法のターン制コンバットではなく、いろんな要素が盛り込まれていて戦略性が高いのは分かる。

 例えば「明るさ」。人間キャラは暗い場所では攻撃が当たりにくく、逆にモンスターは暗い場所のほうが得意。だから明るさの調節が大事で、キャラに松明を持たせたり、壁の燭台に火を灯したり、魔法で光の玉を召喚するなどの工夫が必要。

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暗い場所なので敵モンスターはバフを受けている

 あとは「カバー」。遮蔽物に隠れていると回避率が上がる、という『XCOM』風の要素。カバーにはハーフカバーとフルカバーの2種類があり、フルカバーの相手に攻撃を当てるのは至難の業なので、なんとか引っ張り出す必要がある。カバーのほかにも、味方を援護するパークというのが存在し、そのパークを持つキャラの近くにいれば敵の攻撃命中率が下がるので、ポジショニングは大事。

 このカバーと関連して「視界」の要素もある。遠距離からこちらを狙うアーチャーや魔法使いは厄介なうえに、遮蔽物に隠れていることが多くて弓が当たらない。そういうときは霧系の魔法で視界を妨害すれば、おのずと近づいてこざるを得ず、接近戦に持ち込める。ほかにも魔法で真っ黒の球状の空間を作ったり、炎の壁を立てたりもできる。

 TRPGベースなので「機会攻撃」(Attack of Opportunity)も当然ある。敵と隣接している状態で、その敵から離れるように移動するときに攻撃を受けるというやつ。ただし、相手の機会攻撃を避けたければ、機会攻撃を受けずに「離脱」(disengage)するアクションもとれる(ただしそのターンの攻撃機会を失う)。魔法使いやアーチャーは敵と隣接していると攻撃の命中率も下がるので、敵との距離の調節が大事になる。また、相手が隣接するのを待ったうえで攻撃する「待機」(ready)というコマンドも用意されている。

 「魔法」は戦場の華だが、制約も多い。魔法の使用回数には制限があり、キャンプで休息をとらないと回復しない。持続効果のある魔法は「集中」(concentration)を必要とするため、同時に使用することはできない。例えば、霧を発生させる魔法をすでに使っている状態で、複数の敵を混乱させる魔法を使う場合、霧の魔法は解除する必要がある。さらに、「集中」が必要な魔法を使っている状態で敵の攻撃を浴びると、その魔法が解除されてしまうことがある。

 このように制約の多い魔法だが、そのぶん効果は大きい。ファイアボールは広範囲かつ威力が絶大で、視界妨害系の魔法も状況は限定されるがハマれば強い。「カウンタースペル」という特殊な魔法もあり、これは敵の魔法使いが唱えた魔法を打ち消すことができる(相手の魔法によっては打ち消さない選択もとれる)。相手が唱えようとしたファイアボールを打ち消せるのは気持ちいい。

 

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分かりやすい戦闘UI

 以上、『Solasta』の戦闘にはいろんな要素があるのだが、実際にプレイしてみるとそんなに複雑さは感じない。UIが機能的で分かりやすいおかげである。この「アイコン+単語」で構成されるUIは見ただけで自キャラがどんな行動をとれるのかが分かりやすく、他のゲームもこうしてほしい。アイコンだけ表示されていても何が出来るのか分からないことが結構多いので。

 

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酒場で卓を囲む主人公パーティ

 戦闘以外の魅力としては、パーティ内でのユーモアある掛け合いが面白いこと。各キャラの性格に沿ったセリフを喋ってくれるので、ロールプレイが捗る。NPCと会話するときは「パーティ全員で話しかけている」状態なので、パーティの一人がずっと話すのではなく、個々のメンバーに会話のチャンスが用意されている。その会話も個々のキャラの性格に沿ったものになっているのが良い。

 

 不満点としては、ややボリューム不足なために、NPCのキャラの掘り下げが不十分なこと。Arwin Mertonという、かつて有名な冒険者だったが今はただの酒飲みのおじさんがいるのだが、このキャラはいかにも面白そうなのでもっと掘り下げてほしかった。あと、主人公パーティは評議会(Council)という偉い組織の「使者」(deputy)として冒険するので、おのずと評議会のメンバーからいろいろ注文をつけられるんだけど、彼らの個々について知ることができるようなサイドクエストが用意されていたらよかった。終盤に評議会で内紛が起きるみたいな展開になるんだけど、評議会のメンバーが誰が誰だか分からない状態だったので理解しづらかった。

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初登場時はダル絡みしてくる酔っ払いだったArwin Merton

 また、敵の強さのバランス調整がイマイチ。オークやエレメンタルなどの「高HPで高攻撃力」の敵がシンプルに強く、それ以外のゴブリンや人間の敵は弱め。ラストの戦闘はもっと敵を強くしてもよかった。

 このようにいろいろ不満点はあるんだけど、ゲームとしては非常にプレイしやすく面白い。「冒険してる」感を濃厚に感じられる名作だった。

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酒をあおりつつ文句を言い合う主人公パーティ

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「支配者の冠」(Crown of the Magister)にはめるジェムを集めるのが目的

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オークとの共闘もあり

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場所によって様変わりするフィールド

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主人公パーティと共闘するArwin Merton

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シンプルで美しいUI

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人間の顔グラはなんか変