『GreedFall』レビュー
GOOD
・先住民vs征服者というユニークな設定
・癖のあるキャラクター
・退廃感のあるグラフィック
BAD
・フィールドの移動がとにかく面倒
・見せかけの自由度
・ジャンプできない主人公
中世ファンタジー風の世界で、外交官として離島に赴任し、現地の揉め事を解決していくというユニークな設定のRPG。
ストーリーは間違いなく面白い。ティア・フレディ(Teer Fradee)という島にいろんな国が進出していくが、それはもともと島に住んでいた原住民の反発を招き、対立はときに戦争へと発展する。「原住民vs征服者」という対立の中で、どう立ち回っていくかがプレイヤーに問われる。
揉め事を解決していくのが主人公デ・サーデ(De Sardet)の仕事だが、解決方法には幅があって楽しい。「言葉で説得する」という正攻法だけでなく、「賄賂を渡す」「脅す」「交換条件を提示する」などいろんな選択肢が用意されている。完全な善人プレイはできないようになっていて、時と場合に応じて汚い手も使いつつ、狡猾に立ち回っていくことが要求される。
さらに、主人公の「外交官」という立場が選択を難しくさせていて、そのもどかしさが面白い。極悪非道な征服者を見つけたとき、普通のRPGなら「倒す」という選択肢しかないのだが、このゲームでは「国同士の外交関係」を考慮する必要がある。だから、どんなクズ野郎だとしても、唇を噛んで相手国に引き渡す選択肢を選ぶこともある。自分の感情に任せて相手を斬り伏せる選択をしてもいいけど、そうすると外交関係が悪化してあとで困ったりする。こういう設定の妙がストーリーに奥行きを与えている。
このようにストーリーは非常に面白いのだが、その面白さをゲームシステムが台無しにしている。
まず一番の問題は「移動」。クリアまでのプレイ時間は40時間ほど。メイン・サブクエストをほぼすべてこなしてこの時間だが、プレイ時間の半分は移動。ひたすらフィールドを移動するゲームになっている。
グラフィックの質は高いので、ゲーム序盤はその移動の時間も楽しめるものの、同じルートの往復が増える中終盤はとにかく移動が面倒になる。特に、各都市の「自宅→大使館内の大使の部屋」のルートは何十回と行くことになり、うんざりする。移動は移動でも、いろんな場所に移動するのであれば様々な景観を楽しめるからいいのだが、このゲームでは同じルートを行ったり来たりすることがとにかく多いのが難点。ファストトラベルの拠点が大使館内にあれば便利なのに。
さらに、ファストトラベルのシステムにも問題がある。マップ上にあるキャンプからファストトラベルができるのだが、ファストトラベルするたびに「トラベル途中の休憩」のフェーズがある。このフェーズでは買い物をしたり、パーティのメンバーを入れ替えたりできるのだが、買い物は街でできるし、メンバーの入れ替えはキャンプでできる。だからこのフェーズの意味がほとんどない。ファストトラベルのたびに休憩のフェーズが入ってくるのは邪魔でしかない。
こういう移動にまつわる不便さは、プレイ時間を水増しするために意図的に設計されているように見える。ゲームの半分は移動時間なので、それがなくなると総プレイ時間は20時間以下になり、RPGとしてみると短い。ボリューム不足を移動時間で埋め合わせているのだとしたら、魅力あるストーリーの隙間に退屈をギュウギュウに詰め込んでいることに他ならない。
移動のほかにも、システム面の不備は多い。例えば、主人公はジャンプができないので、切り株程度の段差でも乗り越えられない。ジャンプのかわりに、段差のあるポイントではボタンを押すことで段差を越えたり降りたりできるようになっているが、戦闘中はこのアクションができないため、一部の場所では敵から逃げられずに困る。さらに、段差の先にいる敵と戦闘状態になったが、戦闘中は段差を超えられないので接敵できず、段差を介してお見合い状態になるという不具合もある。UIやゲームバランスにも欠点は多く、システムの問題点は挙げればキリがない。
ストーリーはこのゲームでしか体験できない独自性を持っているだけに、その足を引っ張りまくっているシステム面の不備が惜しい。素晴らしいストーリーとクソみたいなシステムが同居している、いびつでアンバランスなゲーム。