つやだしのレモン

読んだもの、見たものの感想を書く場所。

2019-01-01から1年間の記事一覧

谷崎潤一郎 「生活の表面」をそのままなぞれる強さ

細雪(上) (新潮文庫) 作者:谷崎 潤一郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1955/11/01 メディア: 文庫 谷崎潤一郎の特徴は、人間の生活の表面を、そのままなぞれる強さにある。 どんな小説もだいたい、人間の「内面」を掘り下げようとする。ことあるごとに思…

藤緒あい『先生、あたし誰にも言いません』 理性と性欲のせめぎあい

先生、あたし誰にも言いません【電子単行本】 1 (プリンセス・コミックス) 作者: 藤緒あい 出版社/メーカー: 秋田書店 発売日: 2019/01/16 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 藤緒あい『先生、あたし誰にも言いません』全3巻。 Kindleでたまに…

遠藤周作『死について考える』 痛みへの共感が、痛みを和らげる

死について考える (光文社文庫) 作者: 遠藤周作 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 1996/11/01 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (6件) を見る 遠藤周作の晩年の随筆。キリスト教徒の死生観を知りたくて読んだ。 遠藤周作は病気…

半村良『能登怪異譚』 方言で語られる民話風の短編集

能登怪異譚 (集英社文庫) 作者: 半村良 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2014/02/21 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 『日本SF短篇50』に収録されていた半村良「およね平吉時穴道行」が個人的に大好きな短篇だったので、半村良の別の作品を…

『日本SF短篇50 I』 不可解な制約のあるアンソロジー

日本SF短篇50 I (日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー) 作者: 光瀬龍,豊田有恒,石原藤夫,石川喬司,星新一,福島正実,野田昌宏,荒巻義雄,半村良,筒井康隆,日本SF作家クラブ 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2013/02/22 メディア: 文庫 購入: 1人 ク…

昨夜の下痢のはなし

夜1時半、軽い腹痛で目を覚ます。でもまたすぐに眠る。 夜3時頃、猛烈な腹痛で目が覚めて、トイレに駆け込む。 水分多めの、ドロみたいな便が出る。下痢だ。 便の臭いがとにかく強烈。ゲロみたいな臭いが少しする。あまりに臭いので、鼻呼吸から口呼吸に切り…

上田紀行『生きる意味』 「生きる意味」は本当に必要か?

生きる意味 (岩波新書) 作者: 上田紀行 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2005/01/20 メディア: 新書 購入: 15人 クリック: 180回 この商品を含むブログ (48件) を見る 日本が経済成長しているときは、社会が示してくれるコースに乗っていればまずまずの人…

ラヴクラフト『インスマスの影』 クトゥルフ神話と人種差別

インスマスの影 :クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫) 作者: H・P・ラヴクラフト 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/07/26 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 南條竹則・編訳の、クトゥルフ(クトゥルー)神話の短編集。創元文庫の「全集」版と比…

顔を洗わなくなったらニキビが消えた

「顔を洗わなくなったら、顔ニキビが消えた」という話。 自分と同じ症状の人に役立つと信じて書く。 ・症状 年齢:30歳 性別:男 顔のニキビが治らない。20歳前後で顔にニキビができはじめ、それが10年くらい続く。 ニキビが出る位置は、おでこ、頬、口の周…

少年A『絶歌』 少年Aは更生したのか?

元少年A『絶歌』を、「少年Aは更生したのか?」が知りたくて読んだ。 ・加害者が本を出すこと 殺人のような重大事件の加害者が本を出すことには社会的な価値がある。「過去に重大な犯罪を犯した人間がどのように更生したか」(あるいはしていないか)を知る…

Pillars of Eternity レビュー

ゲーム『Pillars of Eternity』(Obsidian Entertainment、2015年)のレビュー。 ・プレイデータ 価格:1990円(Definitive Edition、50%OFF) プレイ時間:50時間 難易度:Hard Good! ・戦闘が楽しい・グラフィックが綺麗・キャラのビルドが幅広い Bad! …

今敏『OPUS』 メタフィクションと現実

OPUS 《完全版》 作者: 今敏 出版社/メーカー: 復刊ドットコム 発売日: 2019/07/25 メディア: コミック この商品を含むブログを見る 『東京ゴッドファーザーズ』『千年女優』『パプリカ』などのアニメ監督として有名な今敏が、『パーフェクトブルー』の制作…

マーティン『洋梨形の男』 不ぞろいな短編集

洋梨形の男 (奇想コレクション) 作者: ジョージ・R・R・マーティン,中村 融 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2009/09/15 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 29回 この商品を含むブログ (52件) を見る 「奇想コレクション」と銘打たれたシリーズ…

徳永進『在宅ホスピスノート』 在宅での死

在宅ホスピスノート 作者: 徳永進 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2015/06/26 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 以下、引用のページ数はすべてKindle版。 ・「在宅での死」と「病院での死」 本書のテーマは、「在宅での死」について見直して…

マーティン『ナイトフライヤー』 マーティンは多彩だ

ナイトフライヤー (ハヤカワ文庫SF) 作者: ジョージ R R マーティン 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/05/15 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作「氷と炎の歌」シリーズの作者であるマーティン…

『アンネの日記』をいまさら読んでみる

増補新訂版 アンネの日記 (文春文庫) 作者: アンネフランク,深町眞理子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2003/04/10 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック: 65回 この商品を含むブログ (79件) を見る 『アンネの日記』。中学生・高校生のときに学校の推薦図…

松本人志の「不良品」発言から考える、「排除」のルール

『ワイドナショー』での松本人志の発言、雑なようで核心をつく発言だったので、以下に思うことを書いてみる。 ・松本人志は何を言ったのか? 川崎殺傷事件の犯人について、松本人志はテレビで以下のような発言をした。 人間が生まれてくる中で不良品が何万個…

凄惨な事件が起きるたびに、『ザ・ワールド・イズ・マイン』の須賀原のセリフを思い出す

誰かが誰かを殺す事件をニュースで目にするたびに、新井英樹『ザ・ワールド・イズ・マイン』の言葉を思い出す。以下は、作中で、須賀原譲二・秋田県警本部長が、記者会見でテレビに向けて語った言葉である。 会見の前に ひと言申し上げたい。 事件に関わるあ…

『アドルフに告ぐ』 本当に「傑作」か?

アドルフに告ぐ 1 作者: 手塚治虫 出版社/メーカー: 手塚プロダクション 発売日: 2014/04/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (6件) を見る 5年ぶりくらいに再読。なんか勝手に「傑作」みたいな刷り込みがされていたけど、よく読んでみるとそうでも…

小説が好きな人向けの、漫画の傑作10選

小説が好きな人向けの、オススメの漫画10選。Kindleで買えて、完結している作品を選出。 「小説が好きな人向け」なので、アクションやバトルよりも、物語として完成度が高いものを選んだ。「短時間でざーっと読む」タイプの漫画ではなく、「腰を据えてじっく…

『DEUCE』 David Simonの新ドラマ

『ザ・ワイヤー』(The Wire)を作ったDavid Simonの新ドラマ。Amazon Primeでシーズン1は視聴可能。 「DEUCE」(デュース)とは、ニューヨークの42丁目の通称。今でいうタイムズスクエアはこの通りにある。42丁目は1950〜1980年代にかけては風俗街で、日本…

『ダイナー』 三池崇史映画の小説版

ダイナー (ポプラ文庫) 作者: 平山夢明 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2012/10/05 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 4回 この商品を含むブログ (23件) を見る 平山夢明『ダイナー』(DINER)の感想。7月5日に映画が公開されるらしい。 平山夢明は『…

『さよならもいわずに』 生々しさと客観性

さよならもいわずに (ビームコミックス) 作者: 上野顕太郎 出版社/メーカー: エンターブレイン 発売日: 2010/07/24 メディア: コミック 購入: 24人 クリック: 450回 この商品を含むブログ (121件) を見る ・生々しい夫婦のやりとり 2人でベッドに入り、妻が…

『レッド』 暴力による組織の支配

レッド 1969?1972(1) (イブニングコミックス) 作者: 山本直樹 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/11/05 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 山本直樹による『レッド』3部作の感想。この3部作で、連合赤軍の結成から、あさま山荘…

『ソフトメタルヴァンパイア』 セクハラのシーンいる?

ソフトメタルヴァンパイア(1) (アフタヌーンコミックス) 作者: 遠藤浩輝 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/11/30 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 『EDEN』『オールラウンダー廻』の遠藤浩輝の最新作。元素を操って戦うバトル漫画。…

『音もなく少女は』 「愛の物語」に偽装された「ヘイトの物語」

音もなく少女は (文春文庫) 作者: ボストンテラン,Boston Teran,田口俊樹 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2010/08/04 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック: 49回 この商品を含むブログ (59件) を見る ボストン・テラン『音もなく少女は』の感想。ネタバレ…

『何が私をこうさせたか』 不可解な人生を歩かされることへの困惑

何が私をこうさせたか――獄中手記 (岩波文庫) 作者: 金子文子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/12/16 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る ・『不当逮捕』の記述 本田靖春『不当逮捕』の中に、朴烈事件の金子文子についての記述がある…

『食糧人類』 楽しいスプラッターSF

食糧人類?Starving Anonymous?(1) (ヤングマガジンコミックス) 作者: 蔵石ユウ,イナベカズ,水谷健吾 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/09/20 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (3件) を見る 完結したので感想。全7巻。ネタ…

STAP細胞事件の「なぜ?」を考える

・なぜ小保方氏はいまだに注目されるのか? 小保方晴子氏はSTAP論文不正事件のあと、2冊の本を出している。『あの日』と『小保方晴子日記』である。本を書くだけでなく、瀬戸内寂聴と対談したり、グラビアを撮ったりもしている。今でも、彼女がなにかするた…

市橋達也『逮捕されるまで』 強烈な自己愛

逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録 作者: 市橋達也 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2011/01/26 メディア: 単行本 購入: 15人 クリック: 1,224回 この商品を含むブログ (35件) を見る 市橋達也の手記。市橋はリンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件の犯人…