つやだしのレモン

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風来忍法帖

●作品メモ

  • 文章が上手い。司馬遼太郎のような変な臭みはなく、ただただ作者の造詣の深さを思い知らされる。
  • 主人公の7人のキャラ付けがあまり上手くいっていない。敵役の風魔忍者3人の術もそれほど恐ろしさがないし、各々の人格が描写されないせいでまるでアンドロイド。7人の女忍者なんて誰ひとりとして思い出せないよ。長編なのだから幾らでも人格を掘り下げるチャンスはあったと思うのだが。人物がしっかり肉付けされていたら、ラストの土饅頭の場面もより悲哀を増して名シーンになったのに。
  • 「ヨツにカマる」という隠語がよく出てくる。「強姦する」という意味で、隠語辞典によればこの言葉は実際にあったらしい。香具師がよく使った用語なのだろうか。他にも「エンコヅケル」「ロクマ」「ヤサバイ」「ビリツリ」「モミ」「オトシコミ」「ヨシコ」「ヤチ」なんかが出てきた。

●キャラクター覚え書き

悪源太助平……主人公。香具師の棟梁格。槍投げに長ける。一度まぐわった相手を虜にする不思議な力をもつ。

七郎義経……二枚目の優男。でもそのキャラは悪源太に完全に喰われて出番がない。

弁慶……その名の通りの偉丈夫。

陣虚兵衛……視力がよい。薄目だが遥か彼方まで見通す眼力。

夜狩りのとろ盛……女性的な喘ぎ声を出す男。

昼寝睾丸斎……軍師。「女とヤっているときに妙案を思いつく」という設定は、小説の後半ではなかったことになっている。

馬左衛門……巨根。デカすぎて女性が受けきれず、いまだに童貞。


 作品中で目立った活躍をみせているのは「悪源太」「とろ盛」「睾丸斎」「馬左衛門」の4人。残りの3人はいたのかいなかったのかよく覚えていない程度の出番だった。