つやだしのレモン

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エスター

エスター [DVD]

エスター [DVD]

 TSUTAYAで借りて観た。主演のイザベル・ファーマンが可愛かった。

 序盤の雰囲気に呑まれた。アメリカ人の日常生活を覗き見たような感覚だった。物語的には、特に何か起きているわけではないのだが、不思議と画面に釘づけになる。

 最初は、「特に何も起こらない映画」なのかと思った。何かが起こりそうで起こらない、悪い予感はするけど、結局は何も起こらない。そんな映画なのかなと思った。予想は裏切られて、きちんとオチのついた良い映画だった。主演の13歳の女の子が頑張っていた。

 鑑賞中に考えていたのは、「何も起こらない映画」についてだった。そういう映画があれば観てみたい。退屈なフランス映画にありそうだが、ああいういかにも前衛的ですよという雰囲気を漂わせた映画ではなくて、『エスター』のようなB級チックな映画で、何も起こらない映画が観てみたい。

 不吉なことが起こる前兆、背筋を走る不安、胃の下に溜まる違和感。でも何か悪いことが生じるわけではない。「嫌な感じ」は絶えずするのだが、家庭は平穏だ。でも少しずつ、生活の裏側で大切なものがずれていっているような気がする。でも何も起こらない。そのまま映画は終わっていく。めでたしめでたし。観客ポカーン。そういう映画は、映画評にはどのように書かれるのだろう。予告編はどういう作りになるのだろう。『オーメン』の何も起こらないバージョン。