つやだしのレモン

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『Detroit: Become Human』レビュー

8  /  10

 

【プレイデータ】
・買った場所: Steam
・プレイ時間: 10.6 時間

【Good】
・練られたストーリー
・豊富な選択肢
・洗練されたグラフィックとUI

【Bad】
QTE多すぎ
・ムービーがスキップ不可なのはリプレイ時に不便

 

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 ストーリーを楽しむアドベンチャーゲーム。アンドロイドが普及した世界で、アンドロイドの自立と反抗を描く。

 特に素晴らしいと思わせるのは、プレイヤーの作品世界への導き方。例えば冒頭で、マーカスが街におつかいに行く場面があるが、マーカスを操作して街を歩く途中で、アンドロイドを非難する演説をする人がいたり、反アンドロイドの人間に絡まれたりする。そのときのゲーム上の目的は単なるおつかいだけど、その過程で「アンドロイドが街中にいる」「アンドロイドで職を奪われた人間がいる」「アンドロイドを憎む人間がいる」ことが分かるようになっている。こういう作品世界の「匂い」を、ムービーやナレーションで直接に説明するのではなく、間接的にかがせるような形にしているから、作品世界の導入が自然に行われるし、プレイヤーの理解度も深まる。

 

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 選択肢の豊富さも特筆すべきポイント。アドベンチャーゲームはプレイヤーに選択を委ねる点が醍醐味だと思うが、このゲームは分岐が豊富に用意されいていて、ひとつひとつの選択が異なる結末へ至るように設計されている。後半は同じキャラクターでも全くの別ルートが用意されていて、作り込みの深さが見てとれる。

 

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 不満は2点ある。

 まずはQTEの多さ。主に戦闘シーンでQTEが要求されるが、「ムービー中に画面に表示されたボタンを急いで押す」というだけのもの。この劣化タイピングゲームのようなチープなミニゲームを、優れたグラフィックと洗練されたUIのなかで行わせられるのには強い脱力感を覚える。こんだけ作り込まれたゲームなのに、これだけ魅力的なストーリーなのに、画面に表示されたボタンを急いで押すだけの作業を求められるのは切ない。

 

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 2つ目の不満はリプレイ時の不便さ。途中のムービーはスキップできないし、ただ歩くだけの場面もカットはできない。だから「この選択肢をとっていたらどうなっていたんだろう」と思ってリプレイするのは時間がかかる。

 このゲームの通しのプレイ時間は10時間程度であり、何度もプレイして別の分岐を楽しむゲームだと思うのだが、リプレイ時の利便性が極めて低い。せめてムービーはスキップできるようにしてほしかった。

 

 総評としては、ストーリーやグラフィック・UIは優れているものの、ゲームのシステムがその魅力を大きく削いでいる。上質なドラマと劣化タイピングゲームを融合させたような、いびつで奇妙なゲーム。