War of the Worlds 印象・感想
『宇宙戦争』 (スティーヴン・スピルバーグ監督、2005年)
○概要
H・G・ウェルズ『宇宙戦争』をスティーブン・スピルバーグが映画化。主演はトム・クルーズ。『マイノリティ・リポート』に引き続いてのスピルバーグ・クルーズのコンビです。
映画の出来に関してかなり賛否両論がありますが、「SFアクション映画」を期待して観ると肩透かしを食らうことは確実。Wikipediaに制作費1億ドルとありますが、とてもそんな巨額を投じたほどの映画には見えません。2005年製作であることを差し引いてもVFXの完成度は高くなく、脚本も平均点以下のどこにでもあるような内容。「スピルバーグが楽して儲けるためにチャチャっと作った映画」っていうのが第一印象。
こういう映画は一度観たら十分ですが、あえてもう一度観直してみました。腐ってもスピルバーグ、「おお」と思えるようなカットはいくつかあって、思った以上に再鑑賞に耐えるスルメ映画です。「主人公が自暴自棄になってピーナッツパンを窓に投げつける」場面なんかは実に素晴らしい。
○「子を導く親の苦労」を知る映画
SFアクション超大作として観ると完璧に期待ハズレですが、子を育てる親(特に男親)の苦労を知る上ではたいへん有益な映画です。主人公レイの二人の糞ガキのまあウザイことウザイこと。ダコタ・ファニング演じるレイチェルは事あるごとにギャアギャア泣き喚きますし、息子のロビーは自分勝手に振る舞ってレイを翻弄します。映画の鑑賞者視点では、この2匹の子どもは物語の円滑な進行を阻害するイライラ要因でしかなく、いろんな批評サイトでもこの2人のキャラ設定は酷評されています。たしかに、この2人のワガママっぷりのおかげで『宇宙戦争』はスケールの大きなSFアクションではなくて家庭内のイザコザを中心としたパニック映画になっています。
ただ、子ども時代のことを振り返ってみると、自分もこの映画の2人のような真正の糞ガキであったことを否定できる人はそれほどいないでしょう。親の存在をシカトし、自分勝手かつ傍若無人に振る舞うのが子どもの真骨頂というものです。この映画ではそんな子どもの子どもらしい姿が実に見事に描写されていて心が痛くなります。親には「養育する義務」があるのに、子どもは「自己主張する権利」を振りかざして精一杯反抗してくるのですから、それは当然イラつくはずです。
ですから、この映画、子を育てる親の苦労を経験した人には好評なんでしょうね。逆に私は「親になんてなるもんじゃない」という思いが強くなりました。