『食糧人類』 楽しいスプラッターSF
食糧人類?Starving Anonymous?(1) (ヤングマガジンコミックス)
- 作者: 蔵石ユウ,イナベカズ,水谷健吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/09/20
- メディア: Kindle版
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完結したので感想。全7巻。ネタバレあり。
・SF+スプラッター
『2001年宇宙の旅』や『星を継ぐもの』といった伝統的なSFの要素を盛り込みつつ、ホラー風に味付けしたカオス作。
最初の第1・2巻はスプラッター全開で、気持ち悪い怪物に人間が食われる場面は『GANTZ』っぽい。こういう怪物+スプラッター系の漫画を見るたびに、『GANTZ』の影響ってめちゃくちゃ大きいんだなあと思う。
ただ読み進めていくと、単なる『GANTZ』フォロワーではないことは分かる。スプラッターは漫画としての味付けで、底にある設定はSF。そこに半分ギャグのような悪趣味で極端な展開が乗っかっている。
ご都合展開ありまくりなので、粗を探そうと思えばいくらでも出てくるだろうけど、これはあくまでエンタメ漫画なので楽しめればそれでいいと思う。実際、エンタメ漫画としてはいろいろ工夫されていて、読んでて楽しかった。
・良いところ
①山引とかいうマッドサイエンティストのキャラが強烈
マッドサイエンティストって使い古された人物造形だけど、山引のマッドさはかなり尖っている。たぶん作者の趣味の悪さが存分に生かされている。科学的な妥当性とか一切考えずにメチャクチャやってるのが面白い。山引が結婚した有希という女性に、猿のDNAを注入して人間と猿の合の子に変えた場面なんて最高。
②漫画としての表現力が高い
単に絵が今風なだけでなく、漫画としての見せ方もしっかりうまい。イナベカズさん凄い。アングルが凝っていて飽きないし、映画的な演出もあったりして楽しい。
・悪いところ
①主人公のキャラが弱い
話を引っ張っていくのは、天才科学者の山引と「増殖種」のナツネの2人。この超人2人に対して、主人公の伊江はごく普通の高校生。山引とナツネの異常さを引き立たせるために主人公はあえて普通にしているんだろうけど、そのせいで主人公の影が薄い。ついでに主人公の親友のカズはもっと薄い。主人公にもっと魅力があれば、ラストの葛藤がもっと生きたんでは。
②怪物がただ気持ち悪いだけ
人間を食う怪物がただ気持ち悪いだけで、ヒールとしての個性に乏しい。怪物に悪役としてのかっこよさみたいなものがあれば、怪物狩りがもっとワクワクするものになったと思う。