つやだしのレモン

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エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』 奇妙なアイディアと暴力の嵐

 SFの著名な短編集はいくつかあるが、これはその1つ。

 初読時の第一印象は、奇抜なアイデアと吹き荒れる暴力の嵐、また嵐。名作集ということもあって佳作が揃っているが、中でも表題作はさすがの名作。ギリシャ神話をSF的世界観で書き直したかのようなストーリーで、1ページ1ページの濃度は凄まじい。神々(天上人たち)の私利私欲のせいで人間世界に悪が撒き散らされていくという奇妙な発想を、フリーダムな文体で書き切っている。

 他には、南極探検を思わせる「眠れ、やすらかに」や、芸術性を追求する宇宙人と私欲に走る地球人の対比がおもしろい「満員御礼」などが印象的。特に「満員御礼」はアイディアが素晴らしい。