つやだしのレモン

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『Blair Witch』レビュー

 7  /  10

 

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GOOD

ホラー演出の確かさ

 開発は『Layers of Fear』を制作した会社なので、ホラーゲームの勘所はよく押さえられている。明るさと視界の制限、静寂と不快音、なかなか姿を見せない敵など、恐怖を演出する要素は一通りそろっている。

 舞台は薄暗い森。一人(+犬)で森を歩くのはもうそれだけで怖く、道に積もる落ち葉を靴が踏みしめる音だけで不安になる。

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「犬」と「ビデオカメラ」

 このゲームの舞台は森。プレイヤーの探索を手伝ってくれるのは「バレット」(Bullet)という名のジャーマンシェパードで、この犬が道案内をしてくれたりアイテムを拾ってきてくれる。

 バレットがいるおかげで、不気味な森の探索はいくぶんか楽になる。一方で、犬が急に吠えたり、威嚇したりするときは「敵」があたりにいる合図となり、恐怖のサインの役目も果たしている。

 犬に加えてもう一つ、プレイヤーの相棒となるのは「ビデオカメラ」。森に潜み住む殺人鬼が残した映像を見るために用意されているアイテムだが、このビデオカメラは特殊な力を持っていて、映像を再生中にポーズすると、そのポーズ時の映像と等しくなるように現実が変化する。この特殊な力を利用した謎解きは純粋に面白く、感心する。

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BAD

凡庸でテンプレなストーリー

 戦争のPTSDを抱える主人公が、森の魔女に魅入られる、というストーリーはあまりに凡庸。しかも、魔女はその姿を見せることは一切なく、主にプレイヤーの目の前に現れるのはカーヴァー(Carver)という殺人鬼のおじさん。ゆえに魔女の存在感はきわめて希薄で、なぜこの魔女がカーヴァーや主人公に殺人をさせようとするかもよく分からない。だから話の展開に説得力がなく、結末もただホラーの定番をなぞっただけにしか映らなかった。

 また、ゲームとしての動機づけも不十分。冒頭で、なぜ行方不明の少年を主人公が探す必要があるかが明かされないため、彼を必死に探す理由がないままプレイヤーは森を探索する。動機づけが希薄なままで探索を進めるため、プレイに集中しづらい。主人公が少年に執着する理由は終盤で明かされるが、これはもっと最初に明らかにすべき情報で、プレイヤーに「なにがなんでも少年を見つけないと」というモチベーションを与えるために必要だった。

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