つやだしのレモン

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『Divinity: Original Sin 2』レビュー

9  /  10

 
GOOD

戦闘の自由度が高い

 このゲームのストロングポイントはなんと言っても「戦闘」の面白さ。キャラが習得できるスキルが多様で、かつ地形による効果もあるため、敵を倒すための選択肢が実に豊富。

 単純に火力でゴリ押すのもいいし、テレポートの魔法で敵をバラけさせて各個撃破でもいいし、Charm系の魔法で敵を洗脳して仲間にしてもいい。戦闘の自由度がきわめて高いので、「どう倒すか」を考えるのが楽しい。 

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驚くほどに作り込まれたクエス

 クエストの作り込みは質・量ともに驚異的。一つひとつのクエストによくここまで細かく分岐を設定するもんだなあと。作るのも大変だろうし、バグチェックにも相当時間がかかったはず。

 序盤(Act 1〜2)の段階で「作り込みの凄さ」はひしひしと感じるので、これは中終盤は息切れして粗いクエストになっていくだろうなと思っていたら、そんな心配はまったくの杞憂だった。クエストは最後まで緻密に作られていて、もはや偏執的というしかないレベル。

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BAD

没入感の低いストーリー

 ストーリーはあまり乗れなかった。アメリカのRPGは「多神教」の世界観が多く、Divinityもその例に漏れていなくて、設定自体にやや食傷気味。どのRPGも金太郎飴のごとく多神教ばかりで、もっとゲームとしての独自性を出してほしいところ。

 また、タイトルにある「Divinity」をめぐるストーリーもあまりに現実離れしていて没入できない。「神」になるために争えって言われてもなーという感じ。謎を解いたり、国の危機を救ったりといったことには頑張ろう!と思えるけど、「神になる」というのは話がぶっ飛びすぎていてついていけなかった。

 物語の展開もところどころ雑。アレグザンダーが一度倒したはずなのになぜかしれっと復活していたり、神になるのを決めるのが「早いもん勝ち競争」だったり。クエストの作り込み具合からは信じられないほどの粗さ。

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初見殺し&理不尽な戦闘

 戦闘は楽しいんだけど、終盤になると初見殺し&理不尽な戦闘が出てきて、セーブ&ロードが必要になる。それが顕著なのはラストバトル。特定の敵のHPを削ると急に地形が変わり新たな敵がワラワラと出てきて愕然とした。

 私はストラテジーゲームにおける「初見殺し」の要素は害悪だと思っている。ゲーム制作者の意図としては、「最初のプレイで戦闘の流れを知ったうえで、戦略を練って再挑戦してね」ということなんだろう。でもストラテジーゲームにおいて、プレイヤーは目の前の戦況を分析し、次に敵がどのような行動をとるかを推測しながら、どのアクションをするのが最良か判断して戦闘を進めているわけで、そこでいきなり盤面をひっくり返すような展開を持ってくるのは、ゲームの戦略性を台無しにするに等しい。

 何が言いたいのかというと、こういうストラテジー系のゲームでは初見でも攻略できるようにすべきということ。初見殺しの戦闘がよくないのは、2度めの戦闘では「ここに2ターン後に敵が現れるから離れておこう」とか「この敵を倒すと別の敵が出てくるからその前にライフを回復しておこう」みたいなことが可能になってしまうこと。そういう作業はもはや「ストラテジー」でもなんでもない。攻略サイトを見ながらゲームを進めているのと同じ。犯人を知りながら推理小説を読み進めているのと同じ。

 自分の行動選択がまずくて、その結果として戦闘に負けるというのは納得できる。2度目の戦闘では、1度目の戦闘は何がいけなかったかを分析し、ではどの行動をとればいいかを考える余地があるから。でも初見殺しの戦闘はそうした戦略性がスポイルされているから退屈になる。

 このゲームは、序盤から中盤にかけては初見殺しの要素は少なく、ストラテジーゲームの醍醐味を楽しめた(Fort Joyでのアレグザンダー戦は途中で巨大ワームが乱入してくるけど、初見でもギリギリ対処できる範囲)。ただ、終盤になるとセーブ&ロードを前提とするような作りの戦闘が出てきて、そこは本作の大きな不満点。

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【総評】

 戦闘の自由度の高さ、クエストの作り込みは他に並ぶものがないほど突出している。個人的にはストーリーと一部の戦闘に不満があったけど、それでも十分に楽しめるほどによく出来たゲーム。