The Banner Saga レビュー
「The Banner Saga」をクリアしました。定価は25ドルで、セールの33%オフの17ドルで買いました。難易度Normalで、プレイ時間は約13時間。
○印象と感想
Good!
- 圧倒的に美しいグラフィック
- 重厚で複雑なストーリー
- 独特な戦闘システム
Bad!
- 15時間ほどでクリアできるボリューム
- 消化不良で終わってしまうストーリー
- 独自なシステムが多いものの、工夫が乏しい
○ストーリー
この世界には二つの種族がいて、一つが人間、もう一つがヴァール(Varl)です。ヴァールは角の生えた巨大な種族で、鍛冶を得意とし建築に長けています。イメージとしては、ドワーフをより巨大にしたものと考えていいかと。ヴァールは戦闘が得意ですが、言動は粗野で荒々しいのが特徴です。
この二つの種族は、ともにルームマザー(Loom Mother、機織りの神)によって創造されました。Loomというのはたぶん「機織り機」という意味で、このゲームには織物関係のフレーズがたくさん出てきます。ルームマザーによって生を受けたこの二つの種族は、容姿や性格の違いによって対立し、戦争状態にありました。
そんな時、ドレッジ(Dredge)という第三の勢力が登場。このドレッジについては謎が多く、詳しいことは語られていません。見た目は黒い甲冑に身を包んだ戦闘機械のようで、感情や意志があるようには見えません。ドレッジたちは街を襲って人間とヴァールをなぎ倒していきます。
ドレッジの出現によって、人間とヴァールは敵対関係をいったん棚上げし、協力してドレッジを討伐することにします。人間とヴァールの連合軍はドレッジと大きな戦いを二度行い、そのどちらもでなんとか勝利を収めました。そして、このゲームの物語は、ドレッジが再び息を吹き返したことで生じる、三度目の大戦争が舞台となります。
ドレッジ軍を率いるのは、ベロウアー(Bellower、怒鳴る者)という不死のドレッジ。何度倒しても蘇るので、人間・ヴァール連合軍は太刀打ちができません。連合軍はドレッジから逃げ回り、なんとかベロウアーを倒す方法を編み出そうとします。
人間とヴァールはドレッジ討伐のために協力関係にありますが、それでもしばしば衝突が起こり、かつて敵対していた歴史が蒸し返されます。繊細で敏捷な人間と、粗野で荒々しいヴァール。この対立関係は、ロード・オブ・ザ・リングズのエルフvsドワーフが下敷きになっているんでしょうきっと。
○登場人物
- 登場人物は数多く、プレイヤーが操作するキャラも変わっていきます。主人公は二人いて、Skogrという辺境の田舎町に住むルーク(Rook)という中年のおっさんと、ハコン(Hakon)というヴァールのリーダー。この二人を交互に操作しながら物語は進み、最後には共闘します。
- 人物はたくさん出てきますが、その描写は甘く、あまり魅力を感じません。ルークとその娘のアレッテ(Alette)の関係性とか、師弟関係のジュノ(Juno)とアイヴィンド(Eyvind)の繋がりとか。登場人物を絞って、一人一人の話をもっと掘り下げてくれれば、もっとストーリーに没入できた気がします。特に、ヴァールたちはみんな同じ性格で、ほとんど違いを感じられませんでした。
○キャラバン運営
- 主人公はキャラバンを組んで移動します。キャラバンを構成するのは、民間人(Clansman、丸腰で戦闘能力なし)、戦士(Fighter、人間)、ヴァール(Varl)の三つ。常時200〜500人ほどのキャラバンでぞろぞろと移動していく様は見ているだけで楽しいです。
- キャラバン運営には食糧(Supply)が不可欠で、食糧がなくなると戦士たちが餓死していきます。ですから、プレイヤーはキャラバンの人数に合わせて食糧を買わないといけません。食糧は街のマーケットで購入できますが、その購入時に必要なのは「名声」(Renown)なるステータス。名声は主に戦闘で勝利することで得られます。
- この名声というステータスは、キャラクターのレベルアップ時にも必要なのでかなり大事。しかも、名声が低くなると士気(Molare)という数値が下がり、戦闘時に不利になってしまいます。かといって、名声を消費するのをケチって食糧を買わないと、道中でバタバタと人が死んで悲惨なことになります。
○戦闘システム
- 戦闘はターン制。自軍の中から6人のメンバーを選んで配置して戦闘開始。かなり独特なシステムで、キャラクターのステータスも不思議なものが多い。
- キャラクターにはレベルがあり、一定人数の敵を倒すことでレベルアップが可能。ただし、その際には名声値が必要なので、誰をレベルアップさせるのかは重要な選択になります。
- ターン制といっても、キャラに「素早さ」みたいなステータスがあって、その高低に応じて行動回数が決まるみたいなことはなし。味方と敵は一人ずつ順番に行動します。だから、こちらの人数が6人で、敵が2人だけという場合、一人当たりの行動数は敵がずっと多くなり、味方の一人のキャラにはなかなかターンが回ってきません。
- この戦闘システムは独特でやや難しく、難易度Normalでしたが何度か全滅しました。中盤あたりでコツを掴めて、そのあとは楽に進めました。大事なのは、「敵にトドメをささず、瀕死の状態で放置すること」です。一人ずつ敵を倒していくと、残った無傷の敵に多くのターンが回るようになって不利。よって、瀕死の敵は放置して、万遍なく攻撃していくのがコツです。そうすると、敵の中でも強いキャラになかなかターンが回らず、ダメージを防ぐことができます。敵が全体的に弱ったところで、一体ずつ狩っていけば、安全かつ確実に勝つことができます。
○まとめ
- グラフィックは目を見張るほどに美しく、タイポグラフィーも洗練されています。雪の振る美しい背景を眺めるだけでも十分に楽しく、旅をしている気分に浸れます。
- ストーリーは重厚で暗い雰囲気。プレイヤーはたくさんの選択をつきつけられ、そのたびに3〜5の選択肢の中から一つを選ばなければなりません。しかし、どれを選んだところで報われない結果に至ることが多く、プラスよりもマイナスが重なっていきます。この辺りの設計はかなりシビアで、楽しい気分にはなれません。
- また、ストーリーは中途半端なところで終わり、きちんと説明されていない箇所がたくさんあります。サーペント(Serpent)という超巨大な蛇とか、途中でどっかにいったヒゲモジャの王子とか、橋を落としたあとのEinertoftの街がどうなったとか。ここらへんは、続編でちゃんと説明されることを祈りましょう。
- キャラバン運営システムは斬新ですが、奥深さがなくてあまり面白くはありません。もっと工夫の余地があるように思います。例えば、食糧調達に長けているキャラがいたりとか、一定のターン数以内に敵を殲滅すれば食糧のボーナスがあるとか。あまりにあっさりし過ぎていて、単に数字をいじっているだけの気持ちになってしまいます。
- 戦闘も同様。同じことの繰り返しで、血湧き肉躍る場面がありません。キャラは大きく分けて、近接戦闘型と遠距離攻撃型の2種類ですが、そのそれぞれに個体差がほとんどなく、どのキャラを使ってもあんまり変わりはないです。しかも、名声を消費して大切に育てたキャラはストーリーの進行とともに理不尽に死ぬor離反するので、育てる甲斐がありません。キャラバン内の裏切りで、エジル(Egil)というキャラがあっさり死んだときには思わずうめき声をあげましたよ。
- 総括すれば、「グラは抜群に美しく、システムも独特で面白みがあるが、まだまだ改善の余地があるゲーム」です。点数をつけるとすれば、100点中70点くらい。でも続編が出れば必ず買います。次回作はもっともっと面白く楽しくなっていると思うので。