つやだしのレモン

読んだもの、見たものの感想を書く場所。

『Void Bastards』レビュー

8  /  10

 

f:id:koyasho25:20210831103310p:plain

 

GOOD

最初の5時間はとんでもなく楽しい

 敵と戦いながらアイテムを集めるFPS。2〜3の重要なアイテムを揃えるとストーリーが進行するので、アイテムを求めていろんな宇宙船を探索していく。ストーリー進行に必要なアイテムは宇宙船で手に入ることもあるし、材料からクラフトすることもできる。
 最初の5時間はとんでもなく楽しい。アメコミ風の凝ったデザイン、ひとクセある主人公、ヘンテコなストーリー、個性的な敵の挙動など、唯一無二のゲーム体験を味わえる。抜群のオリジナリティ。
 FPSとしては『Bioshock』とやや似ていて、特殊なスキルを使って敵の行動を制限するのが醍醐味になっている。例えば、電撃を当てて敵を一時的にフリーズさせたり、猫型ボットを出して撹乱したり、敵をワープさせて部屋に閉じ込めたり。敵によって武器の向き・不向きがあるので、乗船時にどの武器を選択するかも重要。

f:id:koyasho25:20210831103231p:plain

 

BAD

最初の5時間を過ぎるとそんなに楽しくない

 プレイ時間が5時間を過ぎると、「楽しい」よりも「疲れる」が強くなってくる。理由は2つ。
 1つ目は「ゲームオーバーにほぼならない」から。プレイヤーは死んでも代えが補給されるし、HPがゼロになっても復活できるアイテムがあるし、リスク高めの船には乗らなくてもいいし、クリアまでの時間制限はない。だからゲームオーバーになる可能性がほぼない。FPSの醍醐味のひとつは「死ぬかもしれない」というリスクだけど、このゲームでは救済措置が用意されすぎているせいで緊張感が失われている。ゲームとしてヌルいのだ。ただ、Ironmanモードなどの高難易度の設定は用意されているので、このヌルさはそれほど問題ではない。
 2つ目の理由は「盛り上がりに欠ける」で、これがかなり大きい。基本的に、プレイヤーがやることは「敵を倒しながらアイテムを集める」ことのみ。ひたすらパーツを収集するだけで、ボス戦もなければ隠しイベント的なものもない。だからプレイ時間が増えるのに合わせて、同じ作業を繰り返している感は強まっていく。クリア時は「楽しかった」よりも「疲れた」という感想が先にくる。
 各セクションにボスを配置するとか、一部の船は必ず乗らないといけないとか、自船に敵が乗り込んでくるイベントとか、そういうメリハリを生む要素があるともっと楽しめた。

f:id:koyasho25:20210831103317p:plain

『Blair Witch』レビュー

 7  /  10

 

f:id:koyasho25:20210828122739p:plain

GOOD

ホラー演出の確かさ

 開発は『Layers of Fear』を制作した会社なので、ホラーゲームの勘所はよく押さえられている。明るさと視界の制限、静寂と不快音、なかなか姿を見せない敵など、恐怖を演出する要素は一通りそろっている。

 舞台は薄暗い森。一人(+犬)で森を歩くのはもうそれだけで怖く、道に積もる落ち葉を靴が踏みしめる音だけで不安になる。

f:id:koyasho25:20210828122756p:plain

 

「犬」と「ビデオカメラ」

 このゲームの舞台は森。プレイヤーの探索を手伝ってくれるのは「バレット」(Bullet)という名のジャーマンシェパードで、この犬が道案内をしてくれたりアイテムを拾ってきてくれる。

 バレットがいるおかげで、不気味な森の探索はいくぶんか楽になる。一方で、犬が急に吠えたり、威嚇したりするときは「敵」があたりにいる合図となり、恐怖のサインの役目も果たしている。

 犬に加えてもう一つ、プレイヤーの相棒となるのは「ビデオカメラ」。森に潜み住む殺人鬼が残した映像を見るために用意されているアイテムだが、このビデオカメラは特殊な力を持っていて、映像を再生中にポーズすると、そのポーズ時の映像と等しくなるように現実が変化する。この特殊な力を利用した謎解きは純粋に面白く、感心する。

f:id:koyasho25:20210828122838p:plain

 

BAD

凡庸でテンプレなストーリー

 戦争のPTSDを抱える主人公が、森の魔女に魅入られる、というストーリーはあまりに凡庸。しかも、魔女はその姿を見せることは一切なく、主にプレイヤーの目の前に現れるのはカーヴァー(Carver)という殺人鬼のおじさん。ゆえに魔女の存在感はきわめて希薄で、なぜこの魔女がカーヴァーや主人公に殺人をさせようとするかもよく分からない。だから話の展開に説得力がなく、結末もただホラーの定番をなぞっただけにしか映らなかった。

 また、ゲームとしての動機づけも不十分。冒頭で、なぜ行方不明の少年を主人公が探す必要があるかが明かされないため、彼を必死に探す理由がないままプレイヤーは森を探索する。動機づけが希薄なままで探索を進めるため、プレイに集中しづらい。主人公が少年に執着する理由は終盤で明かされるが、これはもっと最初に明らかにすべき情報で、プレイヤーに「なにがなんでも少年を見つけないと」というモチベーションを与えるために必要だった。

f:id:koyasho25:20210828122847p:plain

 

『A Normal Lost Phone』レビュー

 7  /  10

 

f:id:koyasho25:20210825194446p:plain

GOOD

ミステリーのような「謎解き」

 サム(Sam)という名前の18歳の「青年」が落としたスマホを覗き見するゲーム。

 物語はミステリーに近く、サムが隠していることを少しずつ明らかにしていくという内容になっている。一見するとサムは平凡な高校生だが、SNSトーク履歴や出会い系アプリでのコメントを見ていくと、違和感を覚える箇所がいくつか出てくる。book clubに所属しているはずなのに出会い系アプリでは「読書は苦手」と言っていたり、ボードゲーム部の友人からはサムではなくサミラ(Samira)と呼ばれていたり、3年付き合った彼女に唐突に別れを切り出したり。

 こういう違和感は、サムのプライベートに踏み込んでいくうちにきれいに解消され、謎は解けていく。各所に違和感を仕込み、それを後半で回収していく流れが見事で、テキスト量は多いものの時間を感じることなくプレイできる。

 

BAD

希薄な動機づけ

 「落とし物のスマホの中を覗き見する」というのはモラルある行動とはいえない。だからこそ、「スマホを覗き見しなければならない状況」が設定されているべき。例えば「サムが犯罪を犯して、その動機を探るためにスマホを見る必要がある」とか、あるいは「プレイヤーは実はサムの両親で、サムが失踪した理由が知りたくてスマホを見てしまう」みたいな。

 本作にはそういう設定が存在せず、ただスマホを拾っただけの人が覗き見しているので、スマホを覗き見することへの動機づけが薄い。また、覗き見するだけならまだしも、プレイヤーは書きかけのメールを送信したりデートアプリで写真を送ったりみたいなことも要求されるので、「こんなことしていいのかな」という気持ちが常につきまとう。

 とりわけ、このゲームは「性自認とカムアウト」という非常にシリアスなテーマを扱っているため、モラル面はかなり気になる。自分の性をカムアウトすることをサムが深く悩んでいるのに、プレイヤーは許可なくそのプライベートを覗き込んでサムの秘密の日記すら読んでしまうのは、ゲームに託されたメッセージと相容れないように見える。もしこれがコミカルな内容のゲームであれば、フィクションとしての覗き見行為を楽しんでもいいとは思うが、このゲームはそういう覗き見行為を楽しむようなタイプの作品ではない。

 

パスワード探しが難しい

 物語を先に進めるためには、登録制サイトや出会い系アプリなどのパスワードを見つける必要がある。パスワードの手がかりはトークやメールに書いてあるけど、一部はかなり難しい。

 以下の2つのパスワードは自力では分からず、海外の攻略サイトを見て進めた。詰まってる人がいるかもしれないので回答を載せておく。

 

f:id:koyasho25:20210825194452p:plain▲出会い系アプリの「Sam-Thing-Else」のパスワード
→「1219」:サムがLGBTのイベントに参加した日付。

 

f:id:koyasho25:20210825194457p:plain▲電卓アプリ(偽装)のパスワード
→「85922」:LGBTのイベントが開催された都市Covoniaのzip code。LGBT向けの登録制サイトに「電卓アプリのパスワードはあなたたちみんなを表してる」と言っているけど、まさか都市のzip codeとは思わなかった。

『SOMA』レビュー

8  /  10

 

f:id:koyasho25:20210822121112j:plain

GOOD

作り込まれたSF世界

 冒頭にフィリップ・K・ディックの引用。ゲーム序盤で主人公は現代から急に未来っぽい異世界へと飛ぶ。「ディック+異世界」の組み合わせから推測するに、異世界が実は現実で、現実と思っていた現代のほうの世界はドラッグか何かで見ていた仮想現実、それでタイトルの「SOMA」はドラッグの名前、みたいなストーリーなのかなと思って進めていたら、もう全然違った。

 本当のストーリーは、現代でスキャンされていた主人公の脳データが、100年後の未来社会でリブートされ、わけも分からぬままに人類の存亡をかけたミッションを託されるという話。未来社会ではスキャンした脳データをロボットに移植し、新たな人格として起動する技術が確立されている。だから「同じ人が無数に存在」することも可能となっているが、それが倫理的な問題をはらんでいて、というのがメインのテーマ。タイトルの「SOMA」は辞書で調べると「(精神に対する)体」という意味らしく、人間の精神と体が分けられたことで生じる葛藤を描きたいということなんだろう。ただ、こういうテーマはSFではよく見るので、「本当の自分って何?」みたいな問いかけはやや陳腐に感じた。

 ただ、ストーリーが退屈かというとそうではなくて、人類を追いつめるAI(ゲーム中では「WAU」という名称で登場)の設定はかなり面白い。人間を助けるはずのAIが暴走して人間を襲う、というのもSFでは定番中の定番だが、このゲームで面白いと思ったのは「ストラクチャー・ジェル」(Structure Gel)というドロドロした液体。このジェルはもともと、人間が機械をより効率的に稼働させるために開発されたものらしいのだが、生物に投与すると変異(mutation)を生じさせるというとんでもない副作用を持っていた。で、WAUはジェルを通じて他のロボットを操作することができたため、次第にジェルを過度に使用するようになり、ついには死んだ人間にジェルを投与してゾンビのような生物として蘇らせたりし始める。人間から見ればAIの暴走だけど、AIからすると人間を保護し危険から遠ざけているから正しい行動と判断される。

 ふつう、人間と機械をつなぐのは電波とか電子的メッセージになりそうなものだが、このゲームではそれをドロドロした「ジェル」が担っているというのが素晴らしいセンス。ディックの『ユービック』のユービックスプレーのような、最初は「なんだそれ」と思うんだけど、その突飛さゆえに逆に納得してしまうのがSFのガジェットとして面白い。

f:id:koyasho25:20210822121122j:plain

没入感を高める演出

 グラフィックはそこまで高品質ではないが、音の作り込みと視覚効果のおかげで没入感は高い。ジェルによって変異した人間が徘徊している場所がいくつかあるが、その場面の緊迫感は『Alien: Isolation』のよう。

 特にサウンド面は本当によくできていて、主人公の足音、コンピュータに残された会話音声、機械がたてる異音、変異した人間の呼吸音など、不気味な雰囲気を作るのに大きく貢献している。

 さらに、「次にどこへ行けばいいか」「今マップのどのへんにいるか」はインターフェイス上では表示されないため、音声を聞いたりコンピュータ上のデータを読み取って自分で判断しなければいけない。こういう不親切さが生み出す焦りやパニックも恐怖を煽ってくる。

f:id:koyasho25:20210822121127j:plain

 

BAD

世界観を損ねるパズル要素

 ゲームを進行させる過程で、パズル要素が結構ある。「ハンドルを順番に回して機械を作動させる」「パスワードを見つけて個室の扉をアンロックする」みたいなパズルは作品世界に馴染んでいて特に違和感はないのだが、「コンピュータ上で点を一筆書きでつなぐ」みたいなパズルは、なんでそれをクリアすると先に進めるのかが分からないので、リアリティを削いでいる。

 こういうパズル要素はアドベンチャーゲームの常で、ゲームとしては必要なのはわかるが、「めちゃくちゃ文明が発達してるのになんでこんな子供だましみたいなパズルで機械動かしてんだろう」と脱力感に襲われるようなパズルは絶対にないほうがいいと思う。

f:id:koyasho25:20210822121116j:plain

『Divinity: Original Sin 2』レビュー

9  /  10

 
GOOD

戦闘の自由度が高い

 このゲームのストロングポイントはなんと言っても「戦闘」の面白さ。キャラが習得できるスキルが多様で、かつ地形による効果もあるため、敵を倒すための選択肢が実に豊富。

 単純に火力でゴリ押すのもいいし、テレポートの魔法で敵をバラけさせて各個撃破でもいいし、Charm系の魔法で敵を洗脳して仲間にしてもいい。戦闘の自由度がきわめて高いので、「どう倒すか」を考えるのが楽しい。 

f:id:koyasho25:20210629185246j:plain


驚くほどに作り込まれたクエス

 クエストの作り込みは質・量ともに驚異的。一つひとつのクエストによくここまで細かく分岐を設定するもんだなあと。作るのも大変だろうし、バグチェックにも相当時間がかかったはず。

 序盤(Act 1〜2)の段階で「作り込みの凄さ」はひしひしと感じるので、これは中終盤は息切れして粗いクエストになっていくだろうなと思っていたら、そんな心配はまったくの杞憂だった。クエストは最後まで緻密に作られていて、もはや偏執的というしかないレベル。

f:id:koyasho25:20210629185251j:plain

 

BAD

没入感の低いストーリー

 ストーリーはあまり乗れなかった。アメリカのRPGは「多神教」の世界観が多く、Divinityもその例に漏れていなくて、設定自体にやや食傷気味。どのRPGも金太郎飴のごとく多神教ばかりで、もっとゲームとしての独自性を出してほしいところ。

 また、タイトルにある「Divinity」をめぐるストーリーもあまりに現実離れしていて没入できない。「神」になるために争えって言われてもなーという感じ。謎を解いたり、国の危機を救ったりといったことには頑張ろう!と思えるけど、「神になる」というのは話がぶっ飛びすぎていてついていけなかった。

 物語の展開もところどころ雑。アレグザンダーが一度倒したはずなのになぜかしれっと復活していたり、神になるのを決めるのが「早いもん勝ち競争」だったり。クエストの作り込み具合からは信じられないほどの粗さ。

f:id:koyasho25:20210629185256j:plain


初見殺し&理不尽な戦闘

 戦闘は楽しいんだけど、終盤になると初見殺し&理不尽な戦闘が出てきて、セーブ&ロードが必要になる。それが顕著なのはラストバトル。特定の敵のHPを削ると急に地形が変わり新たな敵がワラワラと出てきて愕然とした。

 私はストラテジーゲームにおける「初見殺し」の要素は害悪だと思っている。ゲーム制作者の意図としては、「最初のプレイで戦闘の流れを知ったうえで、戦略を練って再挑戦してね」ということなんだろう。でもストラテジーゲームにおいて、プレイヤーは目の前の戦況を分析し、次に敵がどのような行動をとるかを推測しながら、どのアクションをするのが最良か判断して戦闘を進めているわけで、そこでいきなり盤面をひっくり返すような展開を持ってくるのは、ゲームの戦略性を台無しにするに等しい。

 何が言いたいのかというと、こういうストラテジー系のゲームでは初見でも攻略できるようにすべきということ。初見殺しの戦闘がよくないのは、2度めの戦闘では「ここに2ターン後に敵が現れるから離れておこう」とか「この敵を倒すと別の敵が出てくるからその前にライフを回復しておこう」みたいなことが可能になってしまうこと。そういう作業はもはや「ストラテジー」でもなんでもない。攻略サイトを見ながらゲームを進めているのと同じ。犯人を知りながら推理小説を読み進めているのと同じ。

 自分の行動選択がまずくて、その結果として戦闘に負けるというのは納得できる。2度目の戦闘では、1度目の戦闘は何がいけなかったかを分析し、ではどの行動をとればいいかを考える余地があるから。でも初見殺しの戦闘はそうした戦略性がスポイルされているから退屈になる。

 このゲームは、序盤から中盤にかけては初見殺しの要素は少なく、ストラテジーゲームの醍醐味を楽しめた(Fort Joyでのアレグザンダー戦は途中で巨大ワームが乱入してくるけど、初見でもギリギリ対処できる範囲)。ただ、終盤になるとセーブ&ロードを前提とするような作りの戦闘が出てきて、そこは本作の大きな不満点。

f:id:koyasho25:20210629185308j:plain

 

【総評】

 戦闘の自由度の高さ、クエストの作り込みは他に並ぶものがないほど突出している。個人的にはストーリーと一部の戦闘に不満があったけど、それでも十分に楽しめるほどによく出来たゲーム。

『Bioshock: Inifnite』レビュー

8  /  10

 

GOOD

景色が美しい

 舞台は空中都市コロンビア。空に浮かぶ都市。

 「色」が他のゲームと全然違う。ルネサンス期の絵画のような鮮やかな色と、少しモヤのかかったような遠景。FPSゲームは暗い色合いのゲームが多いので、こういうパッと明るい景色が楽しめるFPSは貴重。

f:id:koyasho25:20210602091031j:plain

 

エリザベスの挙動が楽しい

 ほぼずっと「エリザベス」という名のキャラと一緒に行動する。そのエリザベスの挙動が凝っていて楽しい。壁に背中を預けたり、手を後ろに組んでポスターを見上げたり、机の下を覗き込んだり。表情も豊か。

 このゲームはアイテムがそこら中に配置されているので、アイテム探索の時間がけっこう長いのだが、その時間を単調にせずに視覚的に楽しめる工夫になっている。

f:id:koyasho25:20210602091039j:plain

f:id:koyasho25:20210602091037j:plain

f:id:koyasho25:20210602091046j:plain

 

BAD

FPSとしては欠点が多い

 フックやスカイラインといったギミックは新鮮で面白く、他のFPSにはない強み。でも戦闘システムは出来の悪い部分も目立つ。

 まずは「敵の位置が分かりづらい」こと。敵が背景と同化していて視認しにくいことに加え、敵の声や銃の音のバランスがおかしいせいで、音を聞いての索敵がしにくい。本当はかなり遠くにいる敵の声がすごく近くから聞こえたり、声がする方向とは違う場所に敵がいたりする。だから、ふつうのFPSのように音で敵の位置を判断しようとしてもできない。

 敵の位置を知るためには、敵の前に身を晒して銃撃を浴び、その弾道からおおよその位置を判断するしかない。これがかなりしんどい。

 もう1点の不満は「敵の強さのバランスがおかしい」。『Bioshock』シリーズは戦闘が全体的に緩めで、最高難易度でもそれほど難しくない。本作もそれは変わっておらず、全体的に戦闘は易しい。ただ、終盤で出てくる「Lady Comsock」の亡霊は凶悪で、無限に敵を召喚しつつ本体も固い。この亡霊との3連戦は他の戦闘に比べてはるかに難しく、バランスの悪さを感じる。特に2戦目は、マップの制約で弾薬を補給できないようになっていて、状況によっては詰む人もいるはず(スナイパーを持っていれば遠くからの狙撃で倒せる。つまらない倒し方だが)。この過酷な亡霊3連戦を経たあとにラストバトルの船上での大乱戦をやっても、そんなに難しく感じないので盛り上がりに欠けてしまう。

f:id:koyasho25:20210602091034j:plain

 

プロットが凝りすぎ

 『Bioshock』はストーリー面の評価が高く、本作も同じくプロットはかなり凝っている。ただ、『Bioshock』に比べると凝りすぎで、直感的に理解できるたぐいのものではない。

 『Bioshock』はゲームのシステムそのものを物語に取り込むというのが強いフックになっていると同時に、各キャラの個性を強く感じられる内容になっていた。しかし本作ではプロットを複雑にしすぎたために人物描写が歪んでいて、キャラクターがプロット上でただ動くだけの駒になっている。それを特に感じるのはエリザベスで、終盤にエリザベスが突然覚醒したかのようにすべてを悟り主人公を導くのだが、それが前半のエリザベスのキャラクターと噛み合っていない。プロットを見せるためにキャラクターが犠牲になっている。

f:id:koyasho25:20210602091055j:plain

『Pathfinder: Kingmaker』感想

 『Pathfinder: Kingmaker』の感想。レビューではなくて感想。ちゃんとレビューできるほどプレイできなかったので。

 

【プレイデータ】
・買った場所: Steam
・プレイ時間: 10 時間

【Good】
・美しいインターフェイス

【Bad】
・戦闘のランダム性が極めて高い
・各場所にいる敵の強さが事前に分からないので戦略を立てづらい

 

Pillars of Eternityとの比較

 『バルダーズゲート』の流れを汲む、見下ろし視点のRPG。『Pillars of Eternity』(以下PoE)と似たゲーム性なので、それとの比較で感想を書いておく。

 まずUIは非常に美しい。PoEもUIは優れていたが、本作はそれ以上にリッチで、冒険の雰囲気を高めてくれる。

f:id:koyasho25:20210529101051j:plain

 不満点は戦闘のランダム性の高さと戦略性の低さ。

 PoEに比べてランダム性が極めて高い。序盤は攻撃の命中度が極めて低く、ゆえにクリティカルヒット一つで戦況が大きく動く。戦闘開始すぐに敵のクリティカルをもらうとあっさり全滅してゲームオーバーになりうるが、逆にこちらがクリティカルを決めたら簡単に掃討できる。ゆえにセーブ&ロードが必須になっていて、その作業に耐えられる折れないハートが求められる。また、キャンプ中に敵襲のイベントがあるが、1度のキャンプ中に2回敵が襲ってくることがあり、1回目の戦闘で消耗していると2回目の敵襲に耐えられず詰む。このあたりは正直いって理不尽。

 さらに、マップは手探りで進みながら各場所を探索する形式。PoEだと各エリアの推奨レベルが示されていたため、どのエリアに行けばよいかは分かりやすく、そのエリア内は自由に探索できた。しかし本作は各場所にいる敵の強さが事前に分からないため、「とりあえずその場所に行く→戦ってみて勝てればOK、勝てないなら直前のセーブをロード」という試行錯誤を強いられる。気軽に探索して敵と戦うということができないゲームシステムになっている。探索には大きな制約があり、自由に動き回ることはできない。

f:id:koyasho25:20210529101055j:plain

 10時間プレイした感想として、PoEに比べて、全体的にゲームとしてのクセがかなり強く、このジャンルのゲームへの理解が相当に必要とされる印象。PoEをプレイしたときは大量の文章に苦戦したものの戦闘は特に問題なくこなせたが、このゲームは戦闘まわりのシステムが非常に難しく感じた。

 第1章の序盤で5度目くらいの全滅をしたところで心が折れてしまい、プレイを断念。自分には合わないゲームだった。

f:id:koyasho25:20210529101047j:plain