つやだしのレモン

読んだもの、見たものの感想を書く場所。

アイコ十六歳

アイコ十六歳作者: 駕籠真太郎出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2013/12/19メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る●メモ 収録作品は以下。 「下町の太陽、アイコ 十六歳」 「愛子ふたたび」 「花咲ける純情」 「わが恋せし乙女」 「輝ける青春の光」…

2014年に読んだ本

2014年に読んだ本の中で、印象に残ったもの。本と漫画でそれぞれ3冊ずつ選んだ。 ●本 ジム・トンプスン『残酷な夜』 後半の展開が予想の斜め上をいった。最後の一行を読んでゾワゾワした。 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』 この名作を今さら読み、気づいたが、私は…

小谷野敦『病む女はなぜ村上春樹を読むか』(ベスト新書、2014年)

病む女はなぜ村上春樹を読むか (ベスト新書)作者: 小谷野敦出版社/メーカー: ベストセラーズ発売日: 2014/05/09メディア: 新書この商品を含むブログ (12件) を見る●メモ 面白い。村上春樹批判というよりも、ノーベル賞を絡めて、純文学についてアレコレ語っ…

アーシュラ・K・ル・グィン『世界の合言葉は森』(ハヤカワSF文庫、1990年)

世界の合言葉は森 (ハヤカワ文庫SF)作者: アーシュラ・K・ル・グィン,小尾芙佐,小池美佐子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1990/05メディア: 文庫この商品を含むブログ (13件) を見る●メモ 中編が2つ入っている。「世界の合言葉は森」(The World for Wor…

フィリップ・K・ディック『いたずらの問題』

フィリップ・K・ディック『いたずらの問題』(大森望訳、創元SF文庫)●メモ 不思議な話。物語の掴みが巧い。小説世界の情報を小出しにして、読者の興味を引きつつ、ストーリーは予想しにくい方向へと脱線させていく。このような巧い小説を読むと、ディックの…

「らしい」建築批判

「らしい」建築批判作者: 飯島洋一出版社/メーカー: 青土社発売日: 2014/08/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る●作品メモ 「新国立競技場」の、ザハ・ハディド案の問題点について。どこが問題なのかを詳細に語っている。 「らしい」建築は…

フラクション

フラクション作者: 駕籠真太郎出版社/メーカー: コアマガジン発売日: 2009/11/07メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 7人 クリック: 186回この商品を含むブログ (21件) を見る●作品メモ ミステリなんだろうか。 いや、ミステリじゃないなこれは。悪ふざけ…

The End of the Affair

情事の終り (新潮文庫)作者: グレアムグリーン,Graham Greene,上岡伸雄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/04/28メディア: 文庫この商品を含むブログ (6件) を見る●作品メモ ただの恋愛小説。 カトリックの信仰が一つのテーマ。筆者のグレアム・グリーンの…

悪夢としてのP・K・ディック

悪夢としてのP・K・ディック―人間、アンドロイド、機械作者: P.K.ディック出版社/メーカー: サンリオ発売日: 1986/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る●作品メモ 冒頭に「逃避シンドローム」(友枝康子訳)を置く。これは『模造記憶』(新…

風来忍法帖

風来忍法帖 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)作者: 山田風太郎出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2011/12/22メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (3件) を見る●作品メモ 文章が上手い。司馬遼太郎のような変な臭みはなく、ただただ作…

フランケンシュタイン

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)作者: メアリーシェリー,Mary Shelley,小林章夫出版社/メーカー: 光文社発売日: 2010/10/13メディア: 文庫 クリック: 14回この商品を含むブログ (31件) を見る●作品メモ 翻訳はとても読みやすい。あまりに読みやす…

不思議のひと触れ

不思議のひと触れ (河出文庫)作者: シオドア・スタージョン,大森望出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2009/08/04メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 20回この商品を含むブログ (27件) を見る●作品メモ 題名が示すように、不思議な味わいの短編集。 大事…

輝く断片 Bright Segment

輝く断片 (河出文庫)作者: シオドア・スタージョン,大森望出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/10/05メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (19件) を見る●作品メモ 無駄に文章が上手い作家スタージョンの短編集。 マニアック。…

THE TIME MACHINE

タイムマシン (光文社古典新訳文庫)作者: ハーバート・ジョージウェルズ,Herbert George Wells,池央耿出版社/メーカー: 光文社発売日: 2012/04/12メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (9件) を見る●作品メモ SFの古典。「タイムマシン」という…

12色物語

12色物語 (講談社漫画文庫)作者: 坂口尚出版社/メーカー: 講談社発売日: 2002/11/12メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (9件) を見る●絵を描く詩人 坂口尚さんの漫画にはうっとりする。その作品は一つ一つが美しい芸術のようだ。人…

特捜部Q キジ殺し

特捜部Q ―キジ殺し― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕作者: ユッシ・エーズラ・オールスン,吉田薫,福原美穂子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/04/05メディア: 文庫この商品を含むブログ (14件) を見る●作品メモ デンマーク発のミステリー『特捜部Q』シリー…

SUGAR RIN

シュガー(1)作者: 新井英樹出版社/メーカー: ゴマブックス株式会社発売日: 2014/06/06メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見るRIN(1) (ヤンマガKCスペシャル)作者: 新井英樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/06/06メディア: コミック購入…

特捜部Q 檻の中の女

特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕作者: ユッシ・エーズラ・オールスン,吉田奈保子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/10/05メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (32件) を見る○印象と感想 デンマーク発の警察小…

グレアム・グリーン『ヒューマン・ファクター』

ヒューマン・ファクター〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)作者: グレアム・グリーン,加賀山朗出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/08/01メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る○印象と感想 落ち着いた筆致。登場人物にはその影までが書きこまれている…

残酷な夜

残酷な夜 (扶桑社ミステリー)作者: ジムトンプスン,Jim Thompson,三川基好出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2007/05メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (19件) を見る○印象とか感想とか ジム・トンプスンの小説では一番印象が強い。…

渡辺裕『サウンドとメディアの文化資源学』

サウンドとメディアの文化資源学: 境界線上の音楽作者: 渡辺裕出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2013/10/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る ○メモ・音楽そのものではなく、音楽の周辺が研究対象。・音楽という枠組みを作るもの、支えるも…

The World Is Mine

新井英樹 『ザ・ワールド・イズ・マイン』 (エンターブレイン、2012年) ●印象と感想・暴力と殺人。モンは意味もなく、トシは有意義に。・第1巻は種を蒔いている段階なので、あまり面白くない。だが、第2巻からの展開に驚く。高まる緊張と焦燥。読み進め…

伊豆の踊子

川端康成 『伊豆の踊子』 (新潮文庫) ○印象と感想「伊豆の踊子」「温泉宿」「抒情歌」「禽獣」の短編4作を収録。 川端文学の特徴は、第一に文章が美しいこと、第二にテーマが残酷であること。 文章の美しさに関してはとりたてて説明するまでもない。日本…

Cien Años de Soledad

G・ガルシア=マルケス 鼓直訳 『百年の孤独』 (新潮社) ●印象と感想 ラテン・アメリカ文学といえばこの一冊。何度かこれの書評を読んだので、読む前からぼんやりと結末を知っていた。実際に読むと、やはり抜群に素晴らしい。読書に慣れると新たな発見や喜…

El aleph

ホルヘ・ルイス・ボルヘス 『エル・アレフ』 (平凡社) ●印象と感想 ホルヘスの短編集を読むのは『伝奇集』に次いで二作目。興味深い内容だったが、『伝奇集』に比べると衝撃や新鮮さはなかった。 ボルヘスという作家は扱うテーマが特殊で、その新奇性と奇…

白痴

ドストエフスキー 『白痴』 (新潮文庫) ●印象と感想 訳者あとがきを見ると、ドストエフスキーは「無条件に美しい人」を描くことがこの小説の主題だと述べている。その言葉通り、全くの善人で博愛主義者のムイシュキン公爵がこの物語の主人公である。公爵は…

理性の限界

高橋昌一郎 『理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性』 (講談社現代新書) ○印象と感想 多人数のディスカッション形式で「理性の限界」について語った本。なかなか面白い。ここで言われている「理性」は具体的には「選択」や「科学」や「知識」といった…

Rendezvous in Black

Cornell Woolrich 『Rendezvous in Black』 (Modern Library) ○印象・感想 邦題『喪服のランデブー』。作者はコーネル・ウールリッチ。日本では「ウィリアム・アイリッシュ」という筆名のほうが有名ですね。『幻の女』の作者でお馴染みです。しばしば「都…

Ficciones

ホルヘ・ルイス・ボルヘス 『伝奇集』 (岩波文庫) ○印象と感想 1960年代に世界的なラテンアメリカ文学ブームがありました。その人気を牽引したのはガルシア=マルケスやバルガス=リョサでしょうが、ラテンアメリカ文学の基礎を築いたのはこのボルヘスでし…

The Wisdom of Father Brown

G・K・チェスタトン 『ブラウン神父の知恵』 (創元推理文庫) ○印象と感想 〈ブラウン神父〉シリーズの第2短編集。第1作の『童心』同様、逆説とユーモアに満ちた短編ミステリ集です。収められているのはどれも数十ページの短編ですが、その一つ一つの味付…